Core i5 12600Kのオーバークロック TDP変更による変化

ハイブリッドアーキテクチャになっていることで純粋なスイートスポットを探るのは難しくなりましたが、最近のCPUはハイエンドでは定格でも性能を出すためにワットパフォーマンスが悪くなる傾向があります。
Core i5 12600Kはミドルハイという位置づけだと思いますが、それでもMaxmum Turbo Power(MTP)が150Wと少し前のハイエンドCPUぐらいに電力を消費します。
そこでPコア、Eコアをそれぞれ固定クロックとTDP変更の設定を行いスコアと消費電力の変化を計測します。

PC構成

CPUIntel Core i5 12600K
CPUクーラーSCYTHE MUGEN5 Rev.B SCMG-5100
マザーボードGIGABYTE Z690 UD
MEMORYCorsair CMK32GX5M2B5200C38
電源Corsair AX850 80 PLUS Titanium
SSDWD Black SN700 WDS500G2X0C
ベンチ台STREACOM BC1
OSWindows11 Pro 21H2
その他logicool MK240
GbLAN接続
DP接続4K(3840×2160)
ワットチェッカー REX-BTWATTCH1

UEFI version F4

※室温26.5℃
※Cinebench R23は全て10分完走するのが条件

※消費電力すべてシステム全体の値

Autoの計測結果

第12世代の最初に発売したCoreシリーズはTDPという表記がなくなり、Processor Base Power(PBP)とMaxmum Turbo Power(MTP)になっています。

Intel Core i5-12600K仕様の一部

Cinebench Multiの結果ではアイドルからおおよそ+150Wとなっていて、MTPの値と一致します。

計測内容消費電力スコア
Idle12.6W
Cinebench R20 Single68.1W@4.9GHz 1.26V729pts
Cinebench R20 Multi158W@
Pコア 4.5GHz
Eコア 3.4GHz
1.14V
6642pts
Cinebench R23 Single67.5W@4.9GHz 1.26V1902pts
Cinebench R23 Multi165W@
Pコア 4.5GHz
Eコア 3.4GHz
1.14V
17339pts

Cinebench R23 Multi 10分完走のCPU最高温度は70℃でした。

クロック/電圧固定

Z690 UDの固定電圧は1.1Vからしか設定ができませんでした。
MAXの消費電力を抑えるためには電圧以外の設定で行う必要があります。

Pコア設定変更/Eコア3.4GHz固定

Pコア
クロック
Eコア
クロック
UEFI
CPU Vcore
HWINFO読み
CPU Vcore
Idle消費電力Cinebench R23
Multi 消費電力
Cinebench R23
Multi スコア
最大温度
4.5GHz3.4GHz1.100V1.092V25.5W155W17321pts66℃
4.6GHz3.4GHz1.100V1.092V25.3W159W17633pts68℃
4.7GHz3.4GHz1.100V1.092V25.5W166W17939pts69℃
4.8GHz3.4GHz1.125V1.116V26.4W171W18223pts71℃
4.9GHz3.4GHz1.175V1.140V28.5W192W18536pts79℃
5.0GHz3.4GHz1.225V1.224V29.2W217W18794pts89℃

MTPデフォルトの1コアMAXの4.9GHzであるところをクロック固定で全コア5.0GHzにOCすることができました。
無限5でも90℃以下に収まっているので、CPUクーラーを変更して電圧を盛ればまだ上もいける可能性があります。
但しシステム消費電力は200Wを超えました。

Pコア5GHz設定

4.8GHzから5.0GHzまで盛るとCPU温度が18℃も上昇するため、MTPデフォルト設定であるPコア4.5GHz、Eコア3.4GHzは結構電力効率と発熱がバランスの良い位置になっています。

Pコア4.5GHz固定/Eコア設定変更

Pコア
クロック
Eコア
クロック
UEFI
CPU Vcore
HWINFO読み
CPU Vcore
Idle消費電力Cinebench R23
Multi 消費電力
Cinebench R23
Multi スコア
最大温度
4.5GHz3.5GHz1.100V1.092V27.3W157W17373pts65℃
4.5GHz3.6GHz1.100V1.092V27.1W155W17530pts65℃
4.5GHz3.7GHz1.100V1.092V27.8W157W17661pts66℃
4.5GHz3.8GHz1.100V1.092V27.5W156W17742pts66℃
4.5GHz3.9GHz1.125V1.116V27.6W166W17847pts69℃
4.5GHz4.0GHz1.200V1.188V29.0W193W17950pts79℃

※Cinebench R23 10分完走が条件
※室温26.5℃

高効率のEコアは4コアでHTなしというコアなので、0.1GHzのクロックアップでもCinebenchのスコアは僅かに上昇していきます。しかしVcore1.1V固定では消費電力と発熱はほぼ変化がなくこれならEコアの定格クロックをもう少し上げても良かったのではないかと思うほどです。

Eコアが4.0GHzになると途端に要求電圧が上がり、効率が悪くなりました。

結果を見るとEコアを3.5GHzから4.0GHzへ0.5GHz上げてもCinebenchスコアは3.3%の上昇に留まり、Pコアのサポート的なコアになっている印象です。

Eコア4.0GHz設定

Vcore 1.1V / 1.225V 固定

Pコアが4.5GHz、5.0GHzのクロックでEコアも同時にクロックアップしました。

Pコア
クロック
Eコア
クロック
UEFI
CPU Vcore
HWINFO読み
CPU Vcore
Idle消費電力Cinebench R23
Multi 消費電力
Cinebench R23
Multi スコア
最大温度
4.5GHz3.7GHz1.100V1.092V27.5W162W18344pts68℃
5.0GHz4.0GHz1.225V1.224V29.2W216W19421pts86℃

Eコアのクロックを上げてもVcoreが変わらない限り消費電力に変化ない傾向は「Pコア4.5GHz固定/Eコア設定変更」の検証と同じです。

TDP変更

UEFIの設定にてPackage Power LimitとPlatform Power Limitの違いが分からなかったので、とりあえず一緒にしてみました。

TDPの設定変更
TDP設定Pコア
クロック
Eコア
クロック
HWINFO読み
CPU Vcore
CB R23
消費電力
CB R23
スコア
最大温度効率
125W4.5GHz3.4GHz1.140V169W17347pts72℃102.64
95W4.3GHz3.3GHz1.068V141W16400pts63℃116.31
85W4.0-4.1GHz3.2GHz1.044V130W15706pts56℃120.82
75W3.7GHz3.0GHz1.020V118W14581pts54℃123.57
65W3.5-3.6Ghz2.9GHz0.972V105W13895pts51℃132.33
45W2.9-3.0GHz2.5GHz0.912V85.2W11836pts49℃138.92
35W2.6GHz2.2-2.3GHz0.852V73.8W10479pts46℃141.99
25W2.2GHz1.9GHz0.816V62.9W8722pts44℃138.66
15W1.6-1.7GHz1.7GHz0.756V56.7W6701pts35℃118.18

※CB R23 = Cinebench R23 Multi
※効率 = CB R23消費電力 / CB R23スコア
※Idleはdefault設定と同じ消費電力でした


Cinebench R23 SingleはTDP95W~35WまではMTPデフォルト(4.9GHz)とほぼ同じスコアを出しています。TDP25Wは1802pts、TDP15Wは1595ptsになりました。

TDP125WではMTPデフォルトと変化はありませんでした。
TDP65Wあたりが性能と消費電力のバランスが高い感じですが、それでもMTPデフォルトから1GHzクロックが下がるので、ピーク状態の発熱と消費電力が許容できるなら全てAutoでも良いのではないかと思います。

Pコア、Eコアのコア数制限 / HT off

Pコア4.5GHz、Eコア3.4Ghz、Vcore 1.1Vに固定し、Pコア数とEコア数の変化、さらにHTなしの条件で計測しました。

Pコア数Eコア数Cinebench R23
Multi 消費電力
Cinebench R23
Multi スコア
1コア4コア75.3W5836pts
2コア4コア93.2W8114pts
6コア0コア167W13911pts
6コア
(HT off)
0コア136W10226pts

ここだけの結果で検証すると、Cinebenchのスコアで
(P-2コア_E-4コア)8114 – (P-1コア_E-4コア)5836 = 2278
(P-6コア)6 / 13911 = 2318.5
Pコア1つあたりのスコアは2300程度(※注:CB R23 Singleのスコアとはかなり差がある)

(P-1コア_E-4コア)5836 – 2300 = 3536
Eコア4つのスコアは3536程度

4 / 3536 = 884
3.4GHzのEコアは884程度となります。
これが世代が進みCore i9のEコアが16コア、24コア、32コアとなればスコアも順調に伸びるでしょう。
EコアのIPCやクロックも上がる可能性があるので楽しみな要素です。

Pコア2、Eコア4の設定


何故かPコアを6コアオンリーにした場合で、Eコア0とEコア4で消費電力の違いがありませんでした。
ハイブリッドアーキテクチャがしっかりとタスクをこなせるのであれば、Eコアを無効にする意味はないです。

HT offも消費電力が若干下がりますが、スコアもかなり落ちるので設定するメリットはありません。

メモリーOC

メモリ電圧1.25Vで実施、DDR5-5400はタイミング緩めても起動できず、DDR5-5333はWindows起動後にBSoDになりました。結局XMPのDDR5 5200 CL38-38-38@1.25V以外はまともに動かせませんでした。

まとめ

MTP150WのCore i5-12600Kは実測でもその通りに近しい電力を消費していました。
しかしそこまで無理して電圧をかけクロックを上げている感じではないです。
Rocket LakeのCore i9 11900KとCore i5-12600Kは(Intel Thread Directorがうまく働く必要はあるが)ほぼ同じ性能があることから、150W程度の消費電力でもあまり驚きません。
ライバルに追いつけ追い越せというスタイルからAlder LakeのCore i5が自社の一世代前のRocket Lake最上位モデルを潰しかねないレベルです。

発熱の面ではサイズのミドルクラス空冷クーラーである無限5でも熱処理できるので、そこまでシビアになることはないです。ただし室温が低めな時期でAuto設定70℃なので、もう1ランク上の空冷か簡易水冷の方が夏でもサーマルスロットリングの心配がなくなると思います。

Core i5-12600Kでこの発熱と消費電力なので、上位のCore i9-12900KやCore i7-12700Kだと状況がまた全然異なると思います。
今後Kなしのシリーズが発表されるはずで、Pコアのパフォーマンスがかなり好感触なので、さらに扱いやすくパフォーマンスにも満足できるCPUが出てくることを期待しています。

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