Ryzen 9 7950XとRyzen 9 5950XのMTP(TDP)設定別スコアと消費電力

“Zen4世代”の「Ryzen 9 7950X」と”Zen3世代”の「Ryzen 9 5950X」を比較していきます。

PC構成

CPURyzen 9 7950XRyzen 9 5950X
CPUクーラーDeepCool LS520
マザーボードASUS TUF GAMING X670E-PLUSASUS STRIX B550-F GAMING
VGAMSI GeForce GT 1030 2G LP OC
MEMORYARK ARD5-U32G88HB-56B-DCFD W4U3200CM-16G
電源CORSAIR AX850
SSDCrucial P5 CT500P5SSD8JPSANDISK SDSSDXPM2-500G-J25
ベンチ台STREACOM BC1
OSWindows11 Pro 22H2
その他logicool MK240
GbLAN接続
DP接続4K(3840×2160)
ワットチェッカー REX-BTWATTCH1

GeForce Driver:527.56
室温:23.6℃

Ryzen 9 7950Xの設定

UEFI version:0821

UEFI設定
Power Management Setup
 ErP Ready  [Disabled] -> [Enabled]

NB Configuration
  Integrated Graphics [Auto] -> [Disabled]

Onboard Device Configuration
  LED lighting [Aura Off]

メモリ設定
[Auto] (DDR5-5200 CL42-42-42-84)

■Windows電源設定
電源プラン[バランス]デフォルトからの変更点

PCI Express
 リンク状態の電源管理
  [適切な省電力] -> [最大限の省電力]
Ryzen 9 7950Xの検証環境

Ryzen 9 5950Xの設定

UEFI version:2806

UEFI設定
APM Configuration
 ErP Ready  [Disabled] -> [Enabled(S4+S5)]
 Enegy Star Ready  [Disabled] -> [Enabled]
 CEC Ready  [Disabled] -> [Enabled]

Onboard Device Configuration
  LED lighting [Aura Off]

メモリ設定
[Auto] (DDR4-3200 CL22-22-22-52)

■Windows電源設定
電源プラン[バランス]デフォルトからの変更点

PCI Express
 リンク状態の電源管理
  [適切な省電力] -> [最大限の省電力]
Ryzen 9 5950Xの検証環境

以下一部
Ryzen 9 7950X = 7950X
Ryzen 9 5950X = 5950X
と略します

CPU Autoの計測

Idle

Idleの最低消費電力を計測します。

計測内容7950X5950X
消費電力57.5W35.2W

マザーボード/メモリ/SSDの違いはありますが、20W以上の差があります。
X670EとB550のチップセットなのでマザーボード性能による影響はありそうですが、7950XはエントリークラスのGPU「GeForce GT1030」と他のパーツは最小構成で57.5Wはさすがに厳しいです。
IdleについてはIntel環境に比べかなり不利な数値です。

■Intelのアイドル消費電力
Z690 Force WIFI + Core i7 13700K + NH-U12A + GeForce GT 1030が31W
Z690 UD + Core i7 13700K + NH-U12A + GeForce GT 1030が25W

ちなみに7950Xアイドルの消費電力は以下のように変化しました。
【GPUなし/CPU内臓】noctua NH-U12A:46.7W
【GPUなし/CPU内臓】DeepCool LS520:49.7W
【GeForce GT 1030】DeepCool LS520:57.5W

空冷のnoctua NH-U12Aから簡易水冷のDeepCool LS520に変更することで3W上昇しました。
240mmの簡易水冷搭載するということはCPUがハイエンド寄りな構成になることが多いので、これは仕方ないです。

UEFIのCPU設定default(Auto)の計測

負荷時の計測は全てCinebench R23 Multiです。
3分完走としました。

計測内容7950X5950X
消費電力317W181W
CBR23 スコア37921pts25219pts
最大温度93.6℃52.8℃
※Cinebench R23 Multi 3分完走
※最大温度はHWInfo読み

5950Xはdefault設定が結構バランスがいいので、特に設定を弄らないでも冷却はそこまで大変ではありません。
ハイエンド空冷クーラーで頑張れば冷やせるレベルです。
7950Xは純粋な性能が高い一方でdefault設定では消費電力、発熱がかなり高くここが評価を落とす一因となります。

UEFIのCPU設定Eco Modeの計測

計測内容7950X5950X
消費電力141W126W
CBR23 スコア28382pts17262pts
最大温度61.2℃52.4℃
※CBR23 = Cinebench R23 Multiの計測
※Cinebench Multi 3分完走
※最大温度はHWInfo読み

Eco Mode設定は7950Xが大きく消費電力を下げますがCinebench R23スコアは5950Xのdefault設定を超えています。
5950Xのdefaultから-40W、+3000ptsになりますが7950XのEco Mode使用は実力を抑えすぎな気がします。
発熱が低くなりかなり扱いやすくなります。

5950Xも省電力にはなりますが、Cinebench R23スコアの落ち方を見るとこちらはEco Mode設定するメリットがあまりなさそうです。

PPT変更での計測

Ryzenの電力制御設定について

Ryzenの電力制御周りはPPT、TDC、EDCの設定がありますが、TUF X670E-PLUSのUEFIの説明には以下のように記載していました。

PPT Limit [W], Board Socket Power capability, adjustable up to motherboard programed PPT limit.
TDC Limit [W], Board thermally constrained current delivery capability, adjustable up to motherboard programed board TDC limit.
EDC Limit [W], Board electrically constrained current delivery capability, adjustable up to motherboard programed board EDC limit.

DeepLで翻訳かけてみたところ

PPT Limit [W](ソケット電源能力):マザーボードにプログラムされたPPTリミットまで調整可能です。
TDC Limit [W], 基板の熱的制約による電流供給能力、マザーボードにプログラムされたTDCリミットまで調整可能です。
EDC Limit [W], ボード電気的制約のある電流供給能力、マザーボードにプログラムされたボードEDC制限まで調整可能。

なんのことだがよく分からないので、とりあえずPPT制限だけ変更して様子を見てみます。

PPT変更時の各種設定

7950XのPPT設定

Ryzen 9 7950Xの各種default設定は以下となっています。
【default】TDC:160A / EDC:225A / PPT:230W
【EcoMode】TDC:75A / EDC:150A / PPT:88W
これに加えTDP(熱設計電力)が170Wと色々と数値がありすぎて複雑化しています。

TDC,EDCはRyzen MasterツールのAuto Overclokingのdefault設定である1000Aで固定し、PPTのみ変更していきます。
設定できるPPTの最低値は35Wでした。

Ryzen 9 7950XのRyzen Master

5950XのPPT設定

Ryzen 9 5950Xの各種default設定は以下となっています。
【default】TDC:95A / EDC:140A / PPT:142W
【EcoMode】TDC:60A / EDC:90A / PPT:87W
TDPは105Wです。

Ryzen MasterツールのAuto Overclokingの設定でdefaultのTDC:160A / EDC:190Aで固定し、PPTのみ変更していきます。
設定できるPPTの最低値は71Wでした。

Ryzen 9 5950XのRyzen Master

PPT設定での計測

7950X5950X
PPTCBR23
消費電力
CBR23
スコア
最大温度CBR23
消費電力
CBR23
スコア
最大温度
395W327W28590pts82.0℃
230W333W37902pts95.1℃
200W296W37473pts85.7℃
175W257W36534pts81.3℃
150W222W35259pts67.2℃220W26637pts60.7℃
125W188W33371pts66.4℃187W25228pts54.0℃
100W158W30414pts49.6℃153W22481pts51.5℃
75W129W25385pts47.6℃119W15226pts44.7℃
71W111W13963pts42.9℃
50W98.1W15751pts33.5℃
35W80.0W4075pts28.5℃
※CBR23 = Cinebench R23
※Cinebench Multi 3分完走

PPT100W~150W設定では7950Xが5950Xと比較して、ほぼ同じ消費電力で30%程度Cinebenchのスコアが高く、Zen4世代のCPU能力の高さがここで実感できます。

7950Xと5950XのPPTを同じ設定にするとIdleが20W差があるのに負荷時に消費電力がほぼ同じになりました。

7950Xの計測結果

PPT35WはCPUクロックが550MHzとなりかなりクロックが下がり、実用的な設定ではありません。

PPT150W(約4.8GHz)、125W(約4.5GHz)あたりが消費電力と性能のバランスが良いです。
150Wと125Wは温度があまり変わらないのですが、ファンの回転数がちょうど上がるタイミングになっているようで、150Wの方が明らかにファンの音が上がります。

PPT150Wでdefault時と同じTDC160A、EDC225Aで計測してみましたが、TDC,EDC1000Aの時と比較して消費電力もCinebenchのスコアも結果はほぼ変わりませんでした。

PPT230Wは240mm簡易水冷クーラーのLS520でもサーマルスロットリングが発生するレベルでした。

5950Xの計測結果

Auto Overcloking設定のdefaultであるPPT395Wでぶん回すと、5950Xのdefault設定から10%ほどCinebenchのスコアがありますが、消費電力が327Wと効率が最悪になりメリットが感じられません。

PPT125Wがdefault設定とほぼ変わらず、このラインの効率が良さそうなので、やはり特に設定変更なしでも扱いやすいCPUです。

クロック&電圧固定

4.0GHz/1.1Vの設定でCinebenchを回してみました。

計測内容7950X5950X
CBR23 スコア29889pts26799pts
※CBR23 = Cinebench R23
※Cinebench Multi 3分完走

IPCは11.5%の上昇でした。

雑感

5950Xから確実に性能を上げた7950Xですがdefault設定で317W、さらに今回使用した240mm簡易水冷でも93.7℃と消費電力・発熱が5950Xから急激に上がりすぎです。
性能だけ見れば評価は高いのですが、扱いにくいCPUとしてAlder LakeやRaptor Lake上位のCPUと同じラインに立ってしまいました。
5950Xにあった扱いやすいCPUというアドバンテージを7950Xで失った形となります。

ただし7950Xの317WはCore i7 13700Kよりは低く、ワットパフォーマンスはRyzenの方が上です。

7950XはPPT125Wや150Wあたりで発熱も大人しくなり、このあたりをdefault設定にしてPPT230WをOCモードとすれば違った評価が得られたのかもしれません。
ライバルのIntel Raptor Lakeを意識した設定なので仕方ないのですが、半端な冷却環境では負荷時に95℃はすぐに到達するのは悩ましいCPUです。

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