液晶ディスプレイは高リフレッシュレートになるほど消費電力が上がるのか

ゲーミングPCや最近ではコンシューマーゲーム機でも120Hz動作に対応しているので、ゲームするにあたって液晶ディスプレイも高リフレッシュレートのものを選択するメリットが出てきました。
PCは120Hzよりさらに上の設定もできるので、今回は360Hz(オーバークロックで390Hz)出せるAcer XV252QFbmiiprxを使用してリフレッシュレートの違いで液晶ディスプレイとPCの消費電力を見ていきます。
別記事では4Kの60/120/144Hzの消費電力計測を行っています。

Acer XV252QFbmiiprxはデザインにゲーミング感はあまりなくむしろオフィスワーク用に見える

PC構成

液晶ディスプレイ

液晶ディスプレイの仕様の一部を抜粋します。

AcerXV252QFbmiiprx
パネルサイズ24.5型 ワイド
液晶パネル方式IPS
最大解像度フルHD(1920×1080)
輝度400cd/㎡(標準)、400cd/㎡(HDR 400モード、ピーク時)
リフレッシュレート360Hz (OC時 390Hz)
消費電力通常(※公式サイト測定):40W/最大:60W
スタンバイ/オフモード:0.50W/0.30W

公式サイトの消費電力は通常40Wと記載がありますが、状態の記載がありません。
現在の24型クラスで通常が40Wだとかなり高い部類に入ると思います。

計測に使用するPC構成1

CPUAMD Ryzen 9 5950X
M/BGIGABYTE B550 VISION D-P
MEMORYT-FORCE XTREEM ARGB
DDR4-3200 CL16-18-18-38 1.35V
VGAGIGABYTE GeForce RTX 3060 VISION OC 12G (rev. 2.0)
電源SUPER FLOWER LEADEX III GOLD ARGB 750W
SSDSeagate FireCuda 530 ZP500GM3A013
OSWindows10 Home 21H1
その他TK-FDM109
GbLAN接続
DP接続フルHD(1920×1080)

計測に使用するPC構成2

CPUAMD Ryzen 5 5600X
M/BGIGABYTE B550I AORUS PRO AX
MEMORYCrucial Ballistix
3600MHz 16-18-18-38にOC
VGAMSI GeForce GTX 1660 Ti GAMING X 6G
電源Corsair SF600 Platinum
SSDSamsung 980 1TB
OSWindows10 Home 21H1
その他logicool MK240
GbLAN接続
DP接続フルHD(1920×1080)

リフレッシュレートを変更して測定する

60~390Hzまで設定を変更し、消費電力を計測します(PC構成1で計測)。
画面表示はWindows10標準壁紙の状態です。

液晶ディスプレイの設定でオーバークロックをすると390Hzまで設定できるようになります。

輝度0~100、それぞれのリフレッシュレートの測定値は以下となります。

輝度60Hz120Hz144Hz240Hz360Hz390Hz
016.0W16.7W17.1W18.8W20.9W21.3W
1016.2W16.9W17.3W19.0W21.1W21.4W
2016.5W17.3W17.5W19.4W21.5W21.9W
3016.9W17.7W18.0W19.7W21.8W22.4W
4017.2W18.0W18.4W20.1W22.1W22.7W
5017.6W18.4W18.8W20.5W22.6W23.1W
6018.0W18.7W19.1W20.9W23.0W23.5W
7018.3W19.0W19.5W21.2W23.3W23.7W
8019.1W19.8W20.1W22.0W24.0W24.5W
9020.0W20.8W21.1W22.9W25.0W25.5W
10021.0W21.7W22.1W23.9W25.9W26.5W

輝度0の60Hzと輝度100の390Hzでも約10Wの差しかありません。
また輝度100の390Hzでも26.5Wです。Acer公式の標準値、40Wよりだいぶ低い値となりました。

輝度0を基準値とした場合、リフレッシュレートだけ変更した消費電力加算値は以下となります。
他の輝度もリフレッシュレートだけ変更した場合は以下の加算値とほぼ同じになります。

輝度60Hz120Hz144Hz240Hz360Hz390Hz
00W+0.7W+1.1W+2.8W+4.9W+5.3W
輝度0を基準値とし、リフレッシュレートだけ変更した消費電力加算値

60Hzから360Hzしても5W程度の上昇で、高リフレッシュレートになっても影響はあまりありません。

PC消費電力

アイドル時の消費電力

前項「リフレッシュレートを変更して測定する」のテスト時のPCの消費電力です。

輝度60Hz120Hz144Hz240Hz360Hz390Hz
PC構成165.1W65.8W65.2W65.2W68.7W68.9W
PC構成251.0W51.5W51.6W51.7W53.9W72.8W

60~240Hzまではほぼ変わりません。

PC構成1(GeForce RTX 3060)では360Hzと390Hzで若干上昇します。

PC構成2(GeForce GTX 1660 Ti)では360Hzで若干上昇、390Hzで大幅上昇しました。
390HzではGPUクロックが大幅に上がり、そのままのクロックをキープしていることが原因です。
その影響で一気に20W程消費電力が上がりました。

GPUによって390Hzの挙動が大きく変わったので、アイドル時に余計な負荷をかけたなくないのであれば、高リフレッシュレートにする際には60Hz時とGPUのコアクロックとメモリクロックを比較するといいと思います。

負荷時の消費電力

PC構成1(GeForce RTX 3060)でRainbow Six Siege(グラフィック設定/最高)の
fps制限をして計測してみました。

Rainbow Six Siegeのゲーム内のfps制限は144Hzまでしかできないので、それ以上は設定ファイルに書き込みます
fps制限60fps120fps144fps240fps360fps390fps無制限
PC最高値消費電力227W256W284W337W373W377W381W
平均FPS60fps120fps144fps239fps350fps370fps388fps
結果resultresultresultresultresultresultresult

Rainbow Six Siegeは2015年発売のソフトなので最新世代のグラフィックカードを使用するとかなりfpsが高く出ます。
GeForce RTX 3060でも360fpsあたりのスコアを出すことができます。
そこにリフレッシュレート制限をかけると、無制限より(特に240fps以下は)消費電力は低くなります。
高リフレッシュレートの液晶ディスプレイの中で割合が多い144fpsの設定では無制限から-100Wとかなり低くなっていますので、発熱も大人しくなり熱暴走のリスクも下がります。

PCのスペックに余裕がある場合、リフレッシュレート制限があるゲームでは液晶ディスプレイの性能によって制限をかけるとPCの消費電力/発熱を抑えることができる可能性があります。

Rainbow Six Siegeベンチマーク中の液晶ディスプレイ消費電力

Rainbow Six Siegeのベンチマーク中に輝度80/390Hz時の液晶ディスプレイの消費電力も測りましたが、消費電力の最小値と最大値の差が約3Wでした。
液晶ディスプレイを全画面白と全画面黒では消費電力に差がでるので他の色も同様です。その色変化によって消費電力も差が生まれますが、R6Sベンチマーク中では大きく変わることはありませんでした。

まとめ

今回使用した24.5型液晶ディスプレイのAcer XV252QFbmiiprxでは高リフレッシュレート設定でも60Hzから大きな消費電力の差は気にするほどないという結果です。
検証した中での最大値が26.5Wだったので、高リフレッシュレートの液晶ディスプレイと合わせて使用するPCと比べれば比率としてはかなり大人しいものです。

影響が大きいのはPC側の方で、解像度がフルHDからWQHD、そして4KになるほどGPU負荷が高くなるように、高リフレッシュレートの液晶ディスプレイはそれに対応する設定を行えばGPUの負荷が上がります。
ゲーム中にはそれが顕著に現れますが、アイドル時でも大幅に上がることがありました。
ゲーム以外にオフィス作業を兼用するPCでは、アイドル時にGPU負荷が無駄に上がることは避けた方が良いので、nVidiaやAMDのツールでGPUクロック/メモリクロックが上がっていないか確認すると良いでしょう。

多くの作業を与えれば負荷が上がるのは当然で、良いバランスの設定をオートでしてくれる機能があれば便利が欲しくなります。
iPhoneのProMotionディスプレイのように静止画の場合はリフレッシュレートを10Hzに落とすというのがあると良いのですが、PCのハードウェアはタッチパネルではないのでリフレッシュレートを上げるトリガーが”タッチした”という条件がなく流用はできなそうです。

バッテリー制限があるスマートフォンと違い、単体の液晶ディスプレイでは省電力技術がなくても特に困ることはないので価格高騰に繋がるようなことはしないでしょう。
今後もし液晶ディスプレイも発熱が問題になることが出てくれば省電力にするためにスポットが当てらると思いますが、直近ではなさそうです。

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