1998年以来24年ぶりに発売されたIntelの単体GPU、Intel Arc A380から約2ヶ月ほど遅れてIntel Arc A770が発売されました(日本では2022年11月11日発売、海外での最速は2022年10月12日発売)。
ネットショップ及び店頭に出回ったのは「Intel Arc A770 Limited Edition 16GB」です。
既にベンチマークレビューも出ていて性能面や安定性でお世辞にも良いと言えないレベルの仕上がりですが、Intelの単体GPUという響きだけで飛びつく人も少なからずともいるのではないでしょうか(その1人がここに)。
今回は性能が近しいと言われているIntel Arc A770とGeForce RTX 3060を比較していきます。
パッケージ・外観
消費電力・ベンチマーク
PC構成
CPU | Intel Core i7 13700K |
CPUクーラー | noctua NH-U12A |
マザーボード | MPG Z690 FORCE WIFI |
VGA | Intel Arc A770 Limited Edition GIGABYTE GeForce RTX 3060 VISION OC 12G (rev. 2.0) |
MEMORY | ASUS DDR5UDIMM32GBKIT DDR5-6000 CL36-36-36-76@1.25V |
電源 | Seasonic SSR-750TD |
SSD | WD Black SN700 WDS500G2X0C |
ベンチ台 | STREACOM BC1 |
OS | Windows11 Pro 22H2 |
その他 | TK-FDM109 GbLAN接続 DP接続4K(3840×2160) ワットチェッカー REX-BTWATTCH1 |
■UEFI設定
Advanced
Native PCIE Enable [Disabled] -> [Enabled]
Native ASPM [Disabled] -> [Enabled]
PCIe PCI ASPM Settings
PEG 0 ASPM [Disabled] -> [L0sL1]
PEG 1 ASPM [Disabled] -> [L0sL1]
PEG 2 ASPM [Disabled] -> [L0sL1]
PCI Express Root Port 5 ASPM [Disabled] -> [L1]
Power Management Setup
ErP Ready [Disabled] -> [Enabled]
Advanced CPU Configuration
Intel C-State [Auto] -> [Enabled]
C1E Support [Auto] -> [Enabled]
Package C State Limit [Auto] -> [C10]
MTP195W
メモリ設定
DDR5-6000 CL36-36-36-76@1.25V
CPU SA Voltage Offset +0.05V
■Windows電源設定
電源プラン[バランス]デフォルトからの変更点
PCI Express
リンク状態の電源管理
[適切な省電力] -> [最大限の省電力]
ワイヤレスアダプターの変更
省電力モード
[最大パフォーマンス] -> [省電力(高)]
NH-U12AではCore i7 13700Kが冷やしきれないのでMTP 195W制限にしています。
アイドルの計測結果
GPU | Arc A770 | RTX 3060 | GPUなし (UHD 770) |
消費電力 | 56.9W | 41.0W | 32.3W |
Arc A770で検証の際、UEFIの設定「Native PCIE Enable」が[Disabled]になっていて80.0Wでした。さすがに高すぎると思い設定を見直してその箇所を[Enabled]で56.9Wになったのでこの設定がかなり効きます。
それでもArc A770はアイドルの消費電力が高めでRTX 3060より15Wも差があります。
Arc A770はセミファンレスですが、ゲームベンチマークを走らせた後に10分放置してもずっとファンが回りっぱなしで、そこからシャットダウンしてもヒートシンクがそこそこ熱を持っているという状態になっていました。
コントロールパネルではGPU電源2WやVRAMクロックが0MHzと数値上はいいのですが、実消費電力と合っていません。
Intel CPUと違ってGPUの省電力制御は良いものとはいえません。
3DMark関連のベンチマーク
3DMarkスコア
計測内容 | Arc A770 | RTX 3060 |
3DMark Time Spy | 13961 | 9366 |
3DMark Time Spy Extreme | 6769 | 4445 |
3DMark Port Royal | 7067 | 5113 |
3DMark Fire Strike | 29039 | 21005 |
3DMark Fire Strike Extreme | 15180 | 10187 |
3DMark Fire Strike Ultra | 7379 | 5264 |
blendar | 850.56 426.63 375.70 | 1165.11 688.61 602.91 |
RTX3060の3DMark Time Spy Extremeのみスクショし忘れました
3DMark系ではArc A770が約40%ぐらいスコアが高い傾向にあります。
3DMark平均消費電力
計測内容 | Arc A770 | RTX 3060 |
3DMark Time Spy | 339W | 259W |
3DMark Time Spy Extreme | 313W | 243W |
3DMark Port Royal | 300W | 237W |
3DMark Fire Strike | 318W | 255W |
3DMark Fire Strike Extreme | 301W | 234W |
3DMark Fire Strike Ultra | 280W | 227W |
blendar | 297W | 194W |
消費電力はRTX3060が50~80Wぐらい低く出ています。
ゲームベンチマーク
解像度をWQHD(2560×1440)で手持ちのゲームでベンチマークモードがあるもので計測しました。
WQHDゲームスコア
計測内容 | Arc A770 | RTX 3060 |
R6S(グラフィック品質:最高) | [avg] 74fps [min] 38fps [max] 195fps | [avg]265fps [min] 222fps [max] 308fps |
Cyberpunk 2077 (クイックプリセット: レイトレーシング中+ スケーリング設定オフ) | [avg] 35.54fps [min] 27.48fps [max] 44.85fps | [avg] 35.18fps [min] 28.95fps [max] 44.01fps |
Cyberpunk 2077 (クイックプリセット:高) ※スケーリング設定オフ | [avg] 52.17fps [min] 32.66fps [max] 124.67fps | [avg] 71.24fps [min] 55.43fps [max] 92.97fps |
farcry6(グラフィック品質:最高) | [avg] 75fps [min] 80fps [max] 67fps | [avg] 71fps [min] 79fps [max] 63fps |
FFXIV 2540 x 1440 高品質 デスクトップ ウィンドウ | 15299 (非常に快適) | 16983 (非常に快適) |
FFXV 2540 x 1440 高品質 デスクトップ ウィンドウ | 4479 (普通) | 6640 (快適) |
Arc A770はRTX3060とほぼ同一のゲームもある一方、レインボーシックスシージやFF15などは明らかに及びません。
特にレインボーシックスシージはかなり不安定なスコアが出ています。
WQHDゲーム平均消費電力
計測内容 | Arc A770 | RTX 3060 |
R6S | 226W | 310W |
Cyberpunk 2077(レイトレーシング中) | 331W | 295W |
farcry6 | 332W | 289W |
FFXIV 2540 x 1440 高品質 デスクトップ ウィンドウ | 310W | 284W |
FFXV 2540 x 1440 高品質 デスクトップ ウィンドウ | 328W | 307W |
3DMarkほどではありませんが、Arc A770の方が消費電力は高めです。
Arc A770はレインボーシックスシージが極端に低く出ていて実力を出し切れていない感じになています。
雑感
Intel Arc A770は初値69,800円ですが、GeFoce RTX 3060は現在大体50,000円ぐらいとなっており、価格帯が1~2ランク下のGPUとかろうじて競り合っているような結果になっています。
よってコスパはかなり悪く、価格が下がらないと厳しいです。
3DMarkだけ見ればArc A770の方が40%ほど勝っていますが、実ゲームのベンチマークになると厳しい戦いとなります。
ただ最近の処理が重めゲームであってもWQHDで30fpsあたりが出ています。
ゲームが動いてる様子を見ていると、IntelのGPUで最新のゲームが動いているというのがなんだか不思議な感覚で、そこは得も言われぬエクスペリエンスを味わえたという前向きな考えができます。
またArc A770は負荷時のコイル鳴きは大き目です。
ゲームの負荷によってはケースに入れても聞こえてきそうなぐらい大きな音がすることがありました。
ファンの音は静かな部類で、これはゲーム中でも特に気になる騒音とはならなかったです。
RTX 3060もコイル鳴きはありますがArc A770と比較して音は小さくケースに入れれば気になることはないレベルでした。
久しぶりのディスクリートGPUとしてはドライバの成熟が期待できるところではありますが、間違いなくメインのゲーミングPCとして選ぶメリットがないGPUです。
Resizable BARが必須ということもあり、PCによっては動かないという落とし穴があります。
BTOとして売られているショップもありますが、PCをあまり知らない人でもIntelというブランド名は知っている。ならばIntelのグラフィックカードもさぞ良いものだろうという勘違いの結果買ってしまわないよう願うばかりです。
では何が魅力あるのか考えてみた結果、こんなところでしょうか
・nVidia、AMD以外の第三勢力のIntelチップのディスクリートGPUである
・デザインが全体的に黒ベースとなっていてかなりクール
・未完成のものがドライバー次第で良くなっていく経過を味わえるかもしれない
良い面で一番印象に受けたのはグラフィックカードのデザインでした。
ほぼ漆黒に作り上げられたボディに派手なロゴや無駄に主張するような文字がなく、シンプルにまとめられていて、他の多くのグラフィックカードとは一線を画すデザインです。
デフォルトのライティングも青と紫とシンプルな光り方で、LED制御して色変更しなくても良い感じです。
Arcシリーズの次世代が出るかは分かりませんが、24年ぶりのGPUとしては(価格を除いては)そこそこ頑張っていると思います。
今後GeForceやRADEONシリーズと並ぶGPUとして展開していって欲しいです。
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