Ryzen 9 9950X3DのPPT別設定 7950X3Dとの比較も行う

Ryzen 9 9950X3DのPPT別測定をしていきます。
PPT変更によりどのCPUクロックが一番電力効率がいいのか探ります。

PPT(Package Power Tracking)は、AMDのCPUパッケージ全体の最大電力消費量を制限するパラメーターです。
TDP(Thermal Design Power)は最大発熱量における冷却の設計の指標に使用されるパラメーターで、公式サイトの「Ryzen 9 9950X3D」ページにもTDP 170Wの記載はありますが、本検証の設定値は電力量に関連するMTPの値を変更します。

PC構成

CPUAMD Ryzen 9 9950X3D
AMD Ryzen 9 7950X3D
Coolernoctua NH-U12A
M/BGIGABYTE B650 AORUS ELITE AX ICE
MEMORYARK ARD5-U32G88HB-56B-D
電源SUPER FLOWER SF-1000F14HT
SSDSamsung 980 PRO MZ-V8P2T0C/IT
OSWindows11 Pro 23H2
その他logicool MK240
GbLAN接続
DP接続4K@60Hz(3840×2160)
ワットチェッカー REX-BTWATTCH1

UEFIバージョン:F32
室温27.6℃

PC設定

UEFI設定
Erp [Disabled] -> [Enabled]
PCIe ASPM Mode [Disabled] -> [Enabled]
Global C-state Control [Auto] -> [Enabled]
DF Cstats [Auto] -> [Enabled]

メモリ設定
DDR5-5600 CL45-45-45-90 1.1V

■Windows電源設定
電源プラン[バランス]デフォルトからの変更点
ワイヤレスアダプターの設定
 省電力モード
  [最大のパフォーマンス] -> [省電力(高)]

PCI Express
 リンク状態の電源管理
  [適切な省電力] -> [最大限の省電力]

UEFI Autoの消費電力・ベンチマーク

計測内容9950X3D7950X3D
消費電力スコア最大温度消費電力スコア最大温度
Idle21.6W21.3W
CB R23 Single93.8W2262pts65.9℃92.5W2036pts67.8℃
CB R23 Multi263W41407pts81.4℃190W35335pts85.2℃
CB 2024 Single91.0W135pts62.6℃88.5W120pts67.6℃
CB 2024 Multi267W2225pts84.1℃179W1900pts81.5℃
DQXベンチ107W736456.5℃101W697257.9℃
FFXIVベンチ109W189381.2℃90.0W202278.9℃
CB = Cinebench
Cinebench Singleは1周計測
Cinebench Multiは3分計測
DQXベンチ:最高品質 / 1920×1080 / ウィンドウ
FFXIVベンチ:高品質 / 1920×1080 / ウィンドウモード / FSR / デスクトップモード(PC)

「Ryzen 9 9950X3D(以降9950X3D)」のCinebench 2024 Singleのクロックと電圧は5.7GHz / 1.368V、Multiは4.85-5.25GHzあたりで1.175Vでした。

「Ryzen 9 7950X3D (以降7950X3D)」のCinebench 2024 Single 5.65GHz / 1.376V、Multiは4.675-4.95GHzあたりで1.057Vでした。

「9950X3D」はバラック状態ではありますが、空冷クーラーのnoctua NH-U12AでもCinebench Multiでサーマルスロットリングを起こさず完了しています。

注目すべきは「9950X3D」は「7950X3D」はよりも消費電力が70W以上高いにもかかわらず、最大温度は低くなっています。
3D V-Cacheの発熱問題を9950X3Dで解消したことが見られる結果でした。

ただしワットパフォーマンスの観点からするとdefault設定では7950X3Dもかなり良いスコアです。

PPT変更

PPTを変更して各数値を計測します。

「9950X3D」のCPU平均クロック/最大温度/電力効率などのグラフはこちら

PPT設定CPU平均
クロック
CPU Vcore
最大値
CB2024
消費電力
CB2024
スコア
最大温度効率
default5.099GHz1.175V267W2225pts84.1℃8.33
175W4.913GHz1.129V233W2176pts78.1℃9.34
150W4.723GHz1.073V199W2092pts66.8℃10.51
125W4.496GHz1.004V169W1988pts60.2℃11.76
100W3.925GHz0.932V137W1822pts54.5℃13.30
75W3.292GHz0.841V105W1583pts51.6℃15.08
50W2.236GHz0.859V77.0W1129pts47.0℃14.66
35W0.728GHz0.712V59.5W364pts45.4℃6.12
CB2024 = Cinebench 2024 Multi
Cinebench 2024 1周の結果
消費電力はIdleは最低値、CB2024は極端に高い数値が稀に見られる場合はそれを除外した最大値
効率 = Cinebench 2024 Multiのスコア / Cinebench 2024 Multiの消費電力
効率はCPU単体ではなく、システム全体の消費電力から割り出しています

「7950X3D」のCPU平均クロック/最大温度/電力効率などのグラフはこちら

PPT設定CPU平均
クロック
CPU Vcore
最大値
CB2024
消費電力
CB2024
スコア
最大温度効率
default4.787GHz1.042V179W1900pts80.8℃10.61
175W4.821GHz1.043V179W1921pts82.5℃10.73
150W4.801GHz1.036V180W1927pts82.0℃10.71
125W4.780GHz1.033V168W1911pts78.9℃11.38
100W4.448GHz0.949V133W1809pts62.1℃13.60
75W3.839GHz0.833V104W1597pts51.2℃15.36
50W2.533GHz0.755V74.0W1134pts45.0℃15.32
35W0.778GHz0.711V56.1W348pts42.9℃6.20
CB2024 = Cinebench 2024 Multi
Cinebench 2024 1周の計測値
消費電力はIdleは最低値、CB2024は極端に高い数値が稀に見られる場合はそれを除外した最大値
効率 = Cinebench 2024 Multiのスコア / Cinebench 2024 Multiの消費電力
効率はCPU単体ではなく、システム全体の消費電力から割り出しています

「9950X3D」は一番効率が良い設定はPPT75W設定でした。
無制限から10%程度スコアが低いですが、消費電力が100W減るPPT125Wは処理速度のバランスが取れている設定です。
PPT 125W設定からCPUファンがフル回転せず、静かになっていきました。

PPT100W以下は2つのCPUどちらもCinebenchスコア、消費電力が同じでした。
1世代進んでいる「9950X3D」が勝っていないのは不可解です。
考えられる要因としてはUEFIのチューニングが、不安定にならないよう余裕あるマージンを取っていて安定性を確保しているのかもしれません。
マザーボードを「ASUS TUF B650 PLUS WIFI」に変更した結果では、PPT100W設定で1891pts、125Wで2080pts、無制限で2292ptsと「B650 AORUS ELITE AX ICE」より良いスコアが計測できました。
UEFIバージョンが上がれば違った結果になる可能性があります。

電力効率面ではデフォルトTDPが120Wに抑えられている「7950X3D」の方が優秀です。
「7950X3D」はPPT125Wより上の設定はスコア、消費電力はほぼ変わりませんでした。
HWInfoで見るとCPU PPTはPPT125Wまでは130Wあたりで頭打ちとなっていることが原因です。

CPU温度については同じPPT設定でも「9950X3D」の方が低い値を示すことが多いです。

3Dベンチマーク

GeForce RTX 4090(PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming)を追加し、PPT別にベンチマークを実施します。
RTX 4090(ドライバーバージョン:572.20)のPower Limitは62%に設定しています。

グラフィックスコア

【サイバーパンク2077】
プリセット:レイトレーシングウルトラ
解像度:WQHD(2560×1440) ボーダーレスウィンドウ
【モンスターハンターワイルズ】
プリセット:ウルトラ + フレーム生成ON
解像度:WQHD(2560×1440) ボーダーレスウィンドウ

サイバーパンク2077「9950X3D」「9950X3D PPT125W」の最低/平均fpsが頭一つ抜けていますが、最高fpsとモンスターハンターワイルズの平均fpsは差は僅かにある程度です。

消費電力

アイドル時は「9950X3D」が「7950X3D」と比較して5W低く、結構な差が出ています。

ゲーム時はスコアが良かった「9950X3D」「9950X3D PPT125W」の消費電力が大きめに出ており、ワットパフォーマンスの点では悪くなっています。
サイバーパンク2077では他と70W近く多く消費しています。

「9950X3D PPT125W」と「7950X3D」の全PPTパターンはゲームスコアと消費電力が似たような傾向にありました。

まとめ

今回の検証では「9950X3D」はピーク性能は確かに上がりましたが、ワットパフォーマンスの点ではあまり良くなかったです。
PPT制限をすると特定の条件から「7950X3D」と変わらない(ただしUEFIのチューニングの可能性あり)ワットパフォーマンスとなることから、ベンチマークを取っている時も乗り換えたワクワク感をあまり感じませんでした。

明確に進化した部分を感じるのはCPU温度です。
「9950X3D」は最大温度が「7950X3D」より同じPPT設定、また「9950X3D」の方が消費電力が高いdefault設定でも低くなる状況が見られました。
Zen5の3D V-CacheはCCDの下(それ以前はCCDの上)になり、冷却効率が上がっているという情報でしたが、それを裏付ける結果となりました。
CPU温度はCPUファン回転数制御に直結している部分ですので、温度が下がれば静音になりやすいです。
それだけでも「9950X3D」に乗り換える価値はありました。

Amazon:Ryzen 9 9950X3D

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