Zen5 8コアCPUを電力周りの設定を変更して検証していきます。

PC構成
CPU | AMD Ryzen 7 9700X |
Cooler | noctua NH-U12A |
M/B | GIGABYTE B650 AORUS ELITE AX ICE |
MEMORY | ARK ARD5-U32G88HB-56B-D |
電源 | SUPER FLOWER SF-1000F14HT |
SSD | Samsung 980 PRO MZ-V8P2T0C/IT |
OS | Windows11 Pro 23H2 |
その他 | logicool MK240 GbLAN接続 DP接続4K@60Hz(3840×2160) ワットチェッカー REX-BTWATTCH1 |
UEFIバージョン:F32
室温26.5℃
■UEFI設定
Erp [Disabled] -> [Enabled]
PCIe ASPM Mode [Disabled] -> [Enabled]
Global C-state Control [Auto] -> [Enabled]
DF Cstats [Auto] -> [Enabled]
LEDs in System Power On State [On] -> [Off]
メモリ設定
DDR5-5600 CL45-45-45-90 1.1V
■Windows電源設定
電源プラン[バランス]デフォルトからの変更点
ワイヤレスアダプターの設定
省電力モード
[最大のパフォーマンス] -> [省電力(高)]
PCI Express
リンク状態の電源管理
[適切な省電力] -> [最大限の省電力]
CPU Autoの計測
計測内容 | 消費電力 | スコア | 最大温度 |
Idle | 20.2W | – | – |
Cinebench R23 Single | 79.4W | 2262pts | 65.1℃ |
Cinebench R23 Multi | 114W | 19863pts | 59.1℃ |
Cinebench 2024 Single | 74.9W | 132pts | 60.4℃ |
Cinebench 2024 Multi | 117W | 1129pts | 60.6℃ |
DQXベンチ 最高品質 1920×1080 ウィンドウ | 84.8W | 7312 | 49.9℃ |
FFXIVベンチ 黄金のレガシー 高品質 1920×1080 ウィンドウモードFSR デスクトップモード(PC) | 86.6W | 1981 | 58.1℃ |
Cinebench Multiは3分計測(2024は1周)
Cinebench 2024 Singleのクロックと電圧は5.55GHz / 1.323V、
Multiは4.45-4.55GHzあたりで1.049Vでした。

全コア負荷の温度が1コア負荷の時と同等か低い結果となっています。
これはデフォルトのTDP65W(PPT88W)なので、1コアでは最大クロックでぶん回しますが、全コア負荷はその枠内に電力を収めようとCPUクロックとコア電圧がかなり低めに設定されるためです。
TDP105Wモード
TDP105Wモードが実装されたのは知っていたのですが、UEFIを見てもそのような場所はなく、手動で設定しようと思ったところECO Modeの設定内にありました。
ECOじゃなく非ECOになるだろというツッコミを心の中に収めつつ設定を変更しました。
計測内容 | 消費電力 | スコア | 最大温度 |
Cinebench 2024 Single | 75.3W | 132pts | 63.1℃ |
Cinebench 2024 Multi | 181W | 1224pts | 89.9℃ |
Cinebench Multiは3分計測(2024は1周)
IdleはTDP65Wモードと変化なし。
Singleも同じく変化なし。
Cinebench 2024 Singleのクロックと電圧は5.55GHz / 1.312V、
Multiは5.2-5.35GHzあたりで1.266Vでした。
Multiは消費電力が60Wも上昇した反面、スコアは10%程度アップとワットパフォーマンスはかなり悪くなります。
サーマルスロットリングは発生していませんが、CPUファンは全開で唸ります。
TDP105WモードにすることでRyzen 7 7700Xのときにあった、扱いにくいCPUに逆戻りします。
空冷運用ならTDP65Wの方がおすすめです。
クロック/電圧固定
電圧が0.9V~1.2Vの時にCinebench R23 Multi 3分が通る最大CPUクロックを試してみました。
クロック/電圧固定 Ryzen 7 9700X
CPUコア電圧固定し、Cinebench 2024 Multiを1周クリアできる最高クロックを0.1GHz刻みで探ります。
低電圧の耐性がどれだけあるかを見るだけなので、実用的な運用では使用できない設定です。
CPU クロック | UEFI CPU Vcore | HWINFO読み CPU Vcore | Idle 消費電力 | CB 2024 消費電力 | CB 2024 スコア | CB R23 スコア | 最大温度 |
4.4GHz | 0.900V | 0.886V | 20.7W | 92.2W | 1068pts | 19656pts | 45.6℃ |
4.9GHz | 1.000V | 0.983V | 21.3W | 112W | 1166pts | 22021pts | 56.5℃ |
5.3GHz | 1.100V | 1.078V | 20.7W | 139W | 1235pts | 23784pts | 66.4℃ |
5.4GHz | 1.200V | 1.174V | 21.2W | 174W | 1256pts | 24249pts | 80.0℃ |
Zen3からZen4は1.0Vの時のクロックがかなり上がったので、Zen5も期待していたのですが電圧/クロックの耐性としてはZen4の「Ryzen 7 7700X」とほぼ変わりません。
Ryzen 5 5600Xでは1.0Vでは4.1GHzでした。
Vcore 1.0Vはファンが静か、1.1Vはファンがかなり高回転になりました。
アイドルの消費電力が全設定で変化がなかったのでVcore電圧を確認したのですが、固定電圧で設定していても低負荷時はその設定値以下に下がっていました。
この挙動はマザーボードによっても変わると思います。
PPT設定変更
PPTを変更して計測しました。
PPT変更 Ryzen 7 9700X
PPT | HWINFO読み CPU Vcore | CPU平均 Clock | CB2024 消費電力 | CB2024 スコア | 最大温度 | 電力効率 |
142W | 1.266V | 5.258GHz | 181W | 1224pts | 89.9℃ | 6.76 |
125W | 1.245V | 5.186GHz | 163W | 1208pts | 80.9℃ | 7.41 |
100W | 1.127V | 4.913GHz | 132W | 1166pts | 67.4℃ | 8.83 |
88W | 1.049V | 4.736GHz | 117W | 1129pts | 60.6℃ | 9.65 |
75W | 1.017V | 4.390GHz | 102W | 1065pts | 54.0℃ | 10.44 |
50W | 0.864V | 3.312GHz | 74.5W | 840pts | 41.0℃ | 11.28 |
35W | 0.721V | 2.170GHz | 56.2W | 586pts | 37.1℃ | 10.43 |
電力効率 = Cinebench 2024 Multiのスコア / Cinebench 2024 Multiの消費電力
電力効率はCPU単体ではなく、システム全体の消費電力から割り出しています
PPT50Wが一番高効率です。
デフォルトPPT88Wもバランスが良い設定です。
PPT125W以上は発熱が高く、電力効率も低くなります。
雑感
動作は軽快そのものですが、少しでも負荷がかかると「CPUクロック5.55GHz / VCore1.323V」状態になり瞬時にCPU温度も上がり、結果ファンが低回転→高回転を繰り返します。
空冷クーラーならではの現象かもしれませんが、通常使用でもこの速度変化が煩わしいです。
この状態はデフォルトであるTDP65Wの状態でも起こります。
上限温度、ファンコントロールなどの変更で制御できますが、ユーザーの環境に合わせて設定変更が必要になります。
最大ブーストクロックを設定することでも制御できますが、手持ちのマザーボードでは「TUF GAMING B650-PLUS WIFI」は設定箇所あり、「B650 AORUS ELITE AX ICE」は設定箇所なしでした。
「9700X」はTDP65Wの低さからパフォーマンスが出ず、後からTDP105Wモードという形で設定変更できるように対応しました。
TDP105Wモードは電力効率は悪いのですが、多くのユーザーが求めているのはよりパフォーマンスが出る設定なのかもしれません。
モード変更で簡単に設定を変えられるので、好みによって選択できるのはありがたいでです。
「Ryzen 7 9800X3D」が圧倒的な人気となっている中で、少し影に隠れている「Ryzen 7 9700X」ですが、2つの価格差はグラフィックカードを1ランク上げられるレベルなのと、デフォルト設定の省電力性の違いもあります。
予算と用途により「Ryzen 7 9700X」が選択肢に入る人も多いと思います。
コメント