複数の電源を状態別に消費電力を計測していきます。

- 比較対象の電源
- 玄人志向 KRPW-L5-600W/80+
- SilverStone SST-ST30SF V2
- SilverStone SST-ST45SF V3
- Fractal Design ION SFX 500G
- SUPER FLOWER LEADEXIII GOLD ARGB 750W
- Cosair SF600 GOLD / SF600 PLATINUM
- SUPER FLOWER LEADEX VI PLATINUM PRO
- 玄人志向 KRPW-TI500W/94+
- Seasonic SSR-650TD / SSR-750TD
- SUPER FLOWER LEADEX TITANIUM SF-1000F14HT 1000W
- ANTEC SIGNATURE1000 Titanium
- FSP Hydro Ti PRO HTI-1000M
- PC構成
- 測定毎のUEFI設定と測定値の割り出し方
- アイドル時の消費電力結果
- 負荷時の消費電力結果
- まとめ
比較対象の電源
今回比較対象の電源を軽く紹介します。
主に静音性について記載することが多いです。
玄人志向 KRPW-L5-600W/80+
80PLUS認証:STANDARD
電源容量:600W

電源にこだわりなく安価に組みたいならこれになりますが、コネクターが最新仕様に追いついてないのでローエンドからミドルレンジまでの構成で組むことになります。
PCI Expressは8pin+6pinのため、8pin x 2のグラフィックカードには対応できません。
ファンは常時回転ですが、うねるような音がします。
公式サイトには静音ファンと書いてありますが、静音とは言えない気がします。
SilverStone SST-ST30SF V2
80PLUS認証:BRONZE
電源容量:300W

300Wの低容量なので使用用途は限られますが、オフィスワーク用に小さいPCを組みたい等の需要は満たせる電源です。
ケーブルがプラグインでないため、小さいケースに入れると接続しないケーブルが邪魔になることがありました。
ファンは常時回転しますが、とても静かで好感触です。
SilverStone SST-ST45SF V3
80PLUS認証:BRONZE
電源容量:450W

SST-ST30SFの450W版です。
容量以外の特性も似ており、ファンも静かで良いです。
Fractal Design ION SFX 500G
80PLUS認証:GOLD
電源容量:500W

UltraFlexケーブルという極めて柔らかいプラグインケーブルを採用しています。
ケーブルの硬さに不満を持っている人でも、このケーブルには不満を漏らさないのはないかと思います。
メタリックな外観がカッコよく、電源筐体をデザインで気に入るとは思いませんでした。
低負荷ではファン回転停止、強制回転の制御などはありません。
低回転ゆるゆるでもいいので回って欲しかったです。
SUPER FLOWER LEADEXIII GOLD ARGB 750W
80PLUS認証:GOLD
電源容量:750W

ファンはもちろん、電源側の接続コネクタにもLEDが搭載されている電源です。
LEDは電源単体でもレインボーや単色の切り替えが出来てかなり鮮やかで良かったです。
ファンノイズは軸音がかなり大きく、アイドル時の使用には耐えられず、ファンの常時回転をオフにして使用していました。
Cosair SF600 GOLD / SF600 PLATINUM
80PLUS認証:GOLD / PLATINUM
電源容量:600W / 600W

外観とサイズはSF600 GOLD / SF600 PLATINUMで同じです。
プラグインケーブルはSF600 GOLDがフラットケーブル、SF600 PLATINUMはスリーブケーブルで異なります。
どちらも電源ユニット内部の温度や負荷などに応じてファン回転数を自動で設定します。低負荷時はファンが止まるZero RPM Fan Modeとなりますが、強制的にファンを回転させるようなモードがないです。
SFX電源は小さいケースに搭載することもあるため、排熱の関係からファンの強制回転は欲しい機能です。
SUPER FLOWER LEADEX VI PLATINUM PRO
80PLUS認証:PLATINUM
電源容量:1000W

電源側のプラグインコネクタがATX24ピン以外全て共通のユニバーサルコネクタを採用しています。
安価でPLATINUM、奥行きも1000Wにしては長すぎないというメリットだらけですが、ファンのノイズ(軸音)はケースに組み込んでもアイドル時は若干聞こえていました。
玄人志向 KRPW-TI500W/94+
80PLUS認証:TITANIUM
電源容量:500W

長年アイドル時の消費電力が優秀、500Wと低容量だが価格もそこそこで手に入れやすいTITANIUM電源です。
ファンの自動停止がない、CPU8ピンは1つのみ、一切プラグインでない等、PC電源ユニットとしては一昔前の仕様です。
ファンの軸音はしますが、ケースに組み込んでしまえば気にならない程度です。
Seasonic SSR-650TD / SSR-750TD
80PLUS認証:TITANIUM / TITANIUM
電源容量:650W / 750W

外観、サイズはSSR-650TD / SSR-750TDどちらも同じです。
電源容量が650Wと750WとTITANIUM電源にしては低容量になります。
ファンの常時回転オン/オフができますが、常時オンにしても極めて静音で優秀です。
現状では全体が650WあたりはミドルレンジからミドルハイのPC構成でも達する可能性があり、高価格帯になりがちなTITANIUM電源としては1Wでも効率良くしたいというニッチなターゲット向けになります。
GeForce RTX 3000シリーズのハイエンドモデルにおいて、一部のSeasonic製電源ユニットでPCの電源が落ちてしまうという相性問題がありました。
これらの電源もその対象だったかと思います。
SUPER FLOWER LEADEX TITANIUM SF-1000F14HT 1000W
80PLUS認証:TITANIUM
電源容量:1000W

奥行きが180mmと少し大きめな電源です。
ファンのノイズが大きめなのが気になりますが、一方でコイル鳴きのような高周波音はかなり控えめで通常気づくことはないレベルに抑えられています。
ANTEC SIGNATURE1000 Titanium
80PLUS認証:TITANIUM
電源容量:1000W
SeasonicのOEM電源と思われますが、素性は静音性は完璧レベル。ただし少し古い型なので、1000Wと容量は十分なのにGeForce RTXで使用する12VHPWRコネクタはなく、入手も難しいです。
FSP Hydro Ti PRO HTI-1000M
80PLUS認証:TITANIUM
電源容量:1000W

Cybenetics LabsでLambda A++認証を取得している電源で、静音認証としては最高ランクとなります。
ファンの音は確かに静かなのですが、その静音性をかき消すかのようにコイル鳴きのような高周波音が目立ちます。
検証時はPC電源も顔から近い位置にあるので、ケースの中に入れてしまえば聞こえないレベルですがSeasonicやSuperFlowerのTITANIUM電源にはなかった傾向です。
PC構成
今回検証するPCの構成です。
共通項目としてディスプレイへの接続はDisplayPort 3840×2160@60Hzとなっています。
CPU | Intel Core i7 13700K |
CPUクーラー | noctua NH-U12A |
マザーボード | MPG Z690 FORCE WIFI |
VGA | SAPPHIRE AMD Radeon RX 7800 XT GAMING 16GB GDDR6 ※【負荷時2】のみ搭載 |
MEMORY | ARK ARD5-U32G88HB-56B-D |
SSD | Samsung 980 PRO MZ-V8P2T0C/IT |
ベンチ台 | STREACOM BC1 |
OS | Windows11 Pro 22H2 |
その他 | logicool MK240 GbLAN接続 DP接続4K(3840×2160) ワットチェッカー REX-BTWATTCH1 |
測定毎のUEFI設定と測定値の割り出し方
アイドル時を2項目、負荷時を2項目設けて計測を行います。
その時のUEFI設定値と、どのような条件で結果とするのかを記載します。
【アイドル1】
低電力のアイドルを維持した時をターゲットとします。
そのため最低電力になるような設定です。
約5分放置して10回以上カウントがあった最小値(小数点第1まで)を取得します。
P-Core Auto/E-Core Auto/CPU Vcore Auto
DDR5-4800
C-state,C1E,EIST(SpeedStep),Turbo boost 全てオン
【アイドル2】
省電力制限をオフにした設定を行います。
CPUのクロックと電圧も固定にし、動的な制御をなくすことで環境による差がでないように設定します。
約5分放置して10回以上カウントがあった最小値(小数点第1まで)を取得します。
P-Core 5.0GHz固定/E-Core 4.0GHz固定/CPU Vcore 1.2V固定
DDR5 5600
C-state,C1E,EIST(SpeedStep),Turbo boost 全てオフ
【負荷時1】
CPU負荷をかけた時の設定値です。
UEFI設定はアイドル2の状態と同じです。
CPU負荷のソフトはCinebench R24を使用します。
Multiスレッド1周の計測にて1W単位で5回以上出てくるものを取得します。
P-Core 5.0GHz固定/E-Core 4.0GHz固定/CPU Vcore 1.2V固定
DDR5 5600
C-state,C1E,EIST(SpeedStep),Turbo boost 全てオフ
【負荷時2】
グラフィックカードを追加し、CPUとGPUに対して負荷をかけます。
負荷ソフトはOCCTを使用します。
テスト内容は「電源」とし、3分間の計測にて1W単位で5回以上出てくるものを取得します。
P-Core 4.7GHz固定/E-Core 3.8GHz固定/CPU Vcore 1.2V固定
DDR5 5600
RADEON RX7800XT
C-state,C1E,EIST(SpeedStep),Turbo boost 全てオフ
アイドル時の消費電力結果

【アイドル1】20-25W付近の結果について
最小値は80PLUS TITANIUMの「KRPW-TI500W/94+」20.4W、最大値は80PLUS STANDARDである「KRPW-L5-600W/80+」が25.3Wとなり、その差は4.9Wです。
低電力の中で約5Wは大きな差ですが、多くの電源は23W付近です。
80PLUS GOLDの「LEADEXIII GOLD ARGB 750W」が24.6Wとあまり良くない結果。
一方で80PLUS BRONZEでも「SST-ST30SF V2」が22.8WとTITANIUMクラスと同等レベルの消費電力となっているのもあります。
ただし電源負荷率を考慮する必要があります。
300W電源「SST-ST30SF V2」は22W付近では約7.3%に対し、500Wであれば約4.4%、1000W級では約2.2%しか使用しておらず、容量が大きい電源ほど低出力では不利になりがちです。
80PLUSの規定では電源負荷率20%,50%,100%の効率(TITANIUM電源のみ10%も含む)を指定しており、それ以下の効率は規定がないのです。
「LEADEXIII GOLD ARGB 750W」はGOLD電源で750Wと他のBRONZE/GOLD電源より容量が大きめなので、少し高い消費電力が出たとしても特に問題になりません。
よってどの80PLUSクラスの電源も電源負荷率が規定以下の消費電力がターゲットになっていますが、各種電源の効率としては極端に悪いものはなかったです。
PCを24時間つけっぱなしでアイドル時も多いという人であれば、電源容量と80PLUSクラスについては考える必要がありそうですが、一概にそうとも言えない事情もあります。
80PLUSクラスはランクが上なほど電源の価格も高いです。
それを電気代をペイできるかといえば、アイドル時の電力差は小さいので(多くの結果である22W付近であれば±3W)、80PLUSクラスよりも安定性とか多くの人が使っていて問題なく使える信頼性を重視する方が良いです。
【アイドル2】55-60W付近の結果について
最小値は80PLUS TITANIUMの「SSR-650TD」54.2W、最大値は80PLUS STANDARDである「KRPW-L5-600W/80+」が59.5Wとなり、その差は5.7Wです。
極低電力時の【アイドル1】でトップとなった「KRPW-TI500W/94+」は3位に後退しています。
多くの電源は56-57W付近で、こちらも全体を通して極端に悪い結果となるものはありませんでした。
負荷時の消費電力結果

【負荷時1】260-290W付近の結果について
最小値は80PLUS TITANIUMの「SF-1000F14HT」262W、最大値は80PLUS BRONZEの「SST-ST30SF V2」286Wとなり、その差は26Wです。
「SST-ST30SF V2」は300W電源でほぼスペックの100%使用していることから効率面が悪い部分が切り取られ、このような結果になりました。
電源負荷率が良さそうな範囲で80PLUSのランクも高い「SF600 PLATINUM」「KRPW-TI500W/94+」「SSR-750TD」でも他のGOLD電源以上の結果はほぼ変わりません。
逆にBRONZE以下は少し差が付き、電源負荷率でもスイートスポットにあたりそうな「KRPW-L5-600W/80+」は80PLUS STANDARDだからなのか結果は良くありません。
【負荷時2】540-570W付近の結果について
PCI Expressのコネクタが足りない、もしくは電源容量がピーク値を超えそうな電源は除外しています。
最小値は80PLUS TITANIUMの「SF-1000F14HT」538W、最大値は80PLUS GOLDの「SF600 GOLD」571Wとなり、その差は33Wです。
「SF600 GOLD」は600W電源でほぼスペックまで使用していることから効率面が悪く、【負荷時1】の「SST-ST30SF V2」と同じ傾向となりました。
「SF600 PLATINUM」も600W電源ですが、効率は少し良い結果です。
「SSR-650TD」は650W電源で他の1000W TITANIUM電源と同等と良好な結果を残しました。
電源負荷率がギリギリのGOLD電源でも一番良い結果との差は33Wなので、電源負荷率の低いものを選べばGOLD電源でも、電気代を意識してPLATINUMクラスの電源を選ぶ必要はないかと思います。
まとめ
今回多くの電源を計測して思ったことは、消費電力に極端な差はなく、80PLUS GOLD以上の電源であれば、値段を上げてまでPLATINUM以上のクラスを無理に上げる必要はないという印象となりました。
BRONZEやSTANDARDはハイエンドな構成でなければ良いと思います。最近では大容量でBRONZE以下というのがほぼないので、結局どれを選んでも容量選択を間違えなければ問題なさそうです。
もちろん電源効率が良いほど少しでも消費電力が減る=発熱も減ってメリットはありますが、価格分だけ得られる効果はないと思います。
予算と天秤にかけて余裕があればPLATINUM以上も考えてみるぐらいで問題ないです。
それよりもファンは常時回転するか、気になるのであればファンの静音性や多くの人が使っていてトラブルが起きていないという機能面や安定性などを優先して考えた方が良いです。
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